江戸も震えた安政の世——光る半七の眼半七捕物帳 年代版<3>

半七捕物帳 年代版<3>
江戸も震えた安政の世——光る半七の眼

岡本綺堂

四六判 302 上製
定価:1,600+税
ISBN978-4-944235-62-9 C0092
在庫あり
書店発売日:2012年11月09日

内容紹介

本シリーズは『半七捕物帳』の各編を事件発生順に収録しました。著者である岡本綺堂は明治初年の生まれ。江戸を肌で知る人達のなかで育った故、『半七捕物帳』は江戸情緒を豊かに感じる時代小説として、現在もたくさんの「捕物ファン」の心を惹きつけ離しません。本書は江戸地図、註釈、年表、舞台となった場所の現在の写真などを添え、半七が生き、躍動した江戸を浮かび上がらせます。散見される多くの難読字にはルビをふり、読みやすさも考慮しています。また本書には『半七捕物帳』の世界を細部にわたるまで網羅した『半七捕物帳事典』の著者・今内孜氏が、研究者としての行きとどいた目で解説文を寄せています。

前書きなど

……こんな駈出しの青二才の手柄にされちゃあ、おれは死んでも浮ばれねえ。こん畜生、おぼえていろ。おれが生きていれば屹と仕返しをする。死ねば化けて出る。どっちにしても唯は置かねえから覚悟しろと、おそろしい顔をして散々に呶鳴ったそうです。
 いわゆる外道の逆恨みと、もう一つには自棄が手伝って、口から出放題の啖呵を切るのは、こんな奴等にめずらしくない事で、物馴れた岡っ引は平気でせせら笑っていますが、なにを云うにも甚五郎は年が若い、その上に人間がおとなしく出来ているので、そんなことを聴くと余り好い心持はしない。と云って、勿論こいつを免すことは出来ませんから、型のごとくに下調べをして、大番屋へ送り込んでしまいました。
 そんなわけで、三甚は石町の金蔵を召捕って、自分の器量をあげた代りに、なんと無くその一件が気にかかって、死罪か遠島か、早く埒が明いて呉れればいいと、心ひそかに祈っている。ましてさつきのおふくろや娘は、ひどくそれを気にかけて、万一彼の金蔵が仕返しにでも来たら大変だと心配している。そのうちに伝馬町の牢破り一件が起って、その六人のなかに本石町無宿の金蔵もまじっていると云うのを聞いて、甚五郎もひやりとしました。牢をぬけて何処へ行ったか知らないが、なんどき仕返しに来ないとも限らない。それを思うと、いよいよ忌な心持になりました。
 こっちは役目で罪人を召捕るのですから、それを一々怨まれては堪らない。罪人の方でもそれを承知していますから、こっちが特別に無理な事でもしない限り、どんな悪党でも捕手を怨むと云うことはありません。したがって、捕手に対して仕返しをするなぞと云
う例は滅多にない。それは三甚も承知している筈ですが、気の弱い男だけに、なんだか寝ざめが好くない。併し仮りにも二代目の三甚と名乗っている以上、子分の手前に対しても弱い顔は出来ませんから、自分ひとりの肚のなかでひやひやしている。こうなると、まったく困ったものです。勿論、この甚五郎がしっかりしていて、もう一度その金蔵を召捕りさえすれば何のことも無いのですが、そう行かないので此のお話が始まるのです。まあ、その積りでお聴きください」

版元から一言

◎ここがポイント
・捕物小説の嚆矢『半七捕物帳』が装い新たに登場
・本シリーズは物語のスタートとなる第一作「お文の魂」を冒頭におき、全69作品の各編を事件発生の年代順に収録しました(本書は「廻り灯籠」「お化師匠」「幽霊の観世物」「半鐘の怪」「海坊主」「川越次郎兵衛」「金の蠟燭」「朝顔屋敷」を収録)
・半七の生きた江戸を理解する一助として、註釈を多く付け、また年表、江戸地図を添えました

「深川の師匠」こだわりの落語会 第304回 圓橘の会

半七捕物帳 年代版2」解説者、三遊亭圓橘師匠。毎月開催しています、深川東京モダン館での【圓橘の会】。

日 時:10月27日(土)15:00~ (開場14:30)

場 所:深川東京モダン館2階

出 演:三遊亭圓橘  橘也

演 目:一、“太宰 治・新釈諸国噺より”[赤い太鼓]
     一、“芸道のいじめ” [淀五郎]

料 金:前売予約 2,000円
    当日券  2,500円

お申込みはこちらから⇒http://www.fukagawatokyo.com/exhibits_events-rakugo.html

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