謎深き幕末江戸の事件――腕を組む半七半七捕物帳 年代版5

半七捕物帳 年代版5
謎深き幕末江戸の事件――腕を組む半七

岡本綺堂

四六判 336 上製
定価:1,600+税
ISBN978-4-944235-67-4 C0093
在庫あり
書店発売日:2013年09月04日

内容紹介

本シリーズは『半七捕物帳』の各編を事件発生順に収録しました。著者である岡本綺堂は明治初年の生まれ。江戸を肌で知る人達のなかで育った故、『半七捕物帳』は江戸情緒を豊かに感じる時代小説として、現在もたくさんの「捕物ファン」の心を惹きつけ離しません。本書は江戸地図、註釈、年表、舞台となった場所の現在の写真などを添え、半七が生き、躍動した江戸を浮かび上がらせます。散見される多くの難読字にはルビをふり、読みやすさも考慮しています。また本書には、江戸・東京文化研究家の砂川保夫氏が、半七の生きた江戸の町のありようをエピソード豊かに描く解説文を寄せています。

前書きなど

江戸っ子は他国の土を踏まないのを一種の誇りとしているので、大体に旅嫌いであるが、半七老人も矢はりその一人で、若い時からよんどころない場合のほかにはめったに旅をしたことが無いそうである。それがめずらしく旅行したと云うことで、わたしが尋ねたときに留守であった。ばあやの話によると、宇都宮の在にいる老人の甥の娘とかが今度むこを取るについて、わざわざ呼ばれて行ったのだと云うことであった。それから十日ほど経つと、老人から老婢を使いによこして、先日は留守で失礼をしたが、昨日帰宅しました。これはおめずらしくもない物だが御土産のおしるしでございますと云って、日光羊羹と乾瓢とを届けてくれた。
 その挨拶ながら私が赤坂の家をたずねたのは、あくる日のゆう方で、六月なかばの梅雨らしい細雨がしとしとと降っていた。襟に落ちる雨だれに首をすくめながら、入口の格子をあけると、老人がすぐに顔を出した。
「はは、ばあやにしては些と早い。屹とあなただろうと思いました」
 いつもの笑顔に迎えられて、わたしは奥の横六畳の座敷へ通った。ばあやは近所へ買物に行ったということで、老人は自身に茶を淹れたり、菓子を出したりした。一通りの挨拶が済んで、老人は機嫌よく話し出した。
「あなたは義理が堅い。この降るのによくお出かけでしたね。あっちにいるあいだも兎かく降られ勝ちで困りましたよ」
「なにか面白いことはありませんでしたか」と、わたしは茶を飲みながら訊いた。
「いや、もう」と、老人はすこしく顔をしかめながら頭を掉ってみせた。「なにしろ、宮から三里あまりも引込んでいる田舎ですからね。いや、それでもわたくしの行っているあいだに、雀合戦があると云うのが大評判で、わたくしも一度見物に出かけましたよ。何万匹とかいう評判ほどではありませんでしたが、それでも五六百羽ぐらいは入りみだれて合戦をする。あれはどう云うわけでしょうかね」
「東京でも曾てそんな噂を聴いたことがありましたね」(「蝶合戦」より)

版元から一言

・捕物小説の嚆矢『半七捕物帳』が装い新たに登場
・本シリーズは物語のスタートとなる第一作「お文の魂」を冒頭におき、全69作品の各編を事件発生の年代順に収録しました(本書は「人形使い」「蝶合戦」「新カチカチ山」「異人の首」「鬼娘」「菊人形の昔」「女行者」「化銀杏」「雪達磨」「河豚太鼓」を収録)
・半七の生きた江戸を理解する一助として、註釈を多く付け、また年表、江戸地図を添えました

「深川の師匠」こだわりの落語会 第304回 圓橘の会

半七捕物帳 年代版2」解説者、三遊亭圓橘師匠。毎月開催しています、深川東京モダン館での【圓橘の会】。

日 時:10月27日(土)15:00~ (開場14:30)

場 所:深川東京モダン館2階

出 演:三遊亭圓橘  橘也

演 目:一、“太宰 治・新釈諸国噺より”[赤い太鼓]
     一、“芸道のいじめ” [淀五郎]

料 金:前売予約 2,000円
    当日券  2,500円

お申込みはこちらから⇒http://www.fukagawatokyo.com/exhibits_events-rakugo.html

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